仕事120%の生活にピリオド。夜と週末は留学経験を活かして 外国人をサポートするNPOを運営/宮原睦子さん (TV番組ディレクター/NPO法人代表。ライフシフト年齢34歳)

プロフィール
宮原睦子さん(ライフシフターNo.33)
・TV局ディレクター
・特定非営利活動法人日本生活・語学支援機構 代表理事(通称:エルジェ)

東京都在住。42歳。夫との二人暮らし。
幼いころから、将来はテレビ番組の制作に携わりたいという夢を持つ。「知らない世界を見たり、たくさんの人と出会うことが夢に近づく一歩だ」と思い、地元、岡山の中学校を卒業後に、英国へ留学。23歳で帰国し、テレビ局でAD、ディレクターとして番組制作に携わる。

2011年にNPO法人を設立。平日はテレビ番組の制作に携わりながら、夜や土曜日・日曜日は、日本で暮らす外国人の生活や語学習得の支援を行っている。単に日本語を教えるだけでなく、外国人のみなさんが安心して暮らせるよう、充実した生活を送れるようサポートする団体として活動している。

座右の銘:報恩謝徳(感謝する気持ち、笑顔の「ありがとう」は笑顔につながると思う。)

http://www.lj-j.org (日本生活・語学支援機構HP)

幼いころから、テレビ番組の制作に携わることが大きな夢であった私は、岡山県の中学校を卒業するとすぐ、英国へ留学しました。知らない世界を見たり、たくさんの人と出会うことが夢に近づく一歩だと思っていたからです。

そして、現地の高校と大学で学んだ後、23歳で帰国。夢が叶い、テレビ番組のADそして、ディレクターとして勤めることができました。
しかし、その生活はというと……食事の時も、友人と出かけても、何をしていても、時間がある限り周りを見渡し、放送できることはないかと探し続ける日々。

自分に「できること」は何かと振り返ることで見えたライフシフト

そんな時、ふと立ち止まり自分が「したいこと」ではなく「できること」は何か?と考えてみました。15歳の時、勢いだけで知らない国に行き、心細く、不安な日々を送ったことを思い出しました。当時、言葉の壁は大きく、伝えたいことを伝えられない辛さや悔しさを感じる毎日でしたが、たくさんの人が支えてくれたのです。

今の自分に「できること」、それは自分が助けてもらったように、ここ日本で生活する外国人のみなさんが、日本語を話すことができるよう力になれればと思ったのです。

外国人のみなさんが安心して暮らせるようにサポートする団体を設立

その後、日本語教師の資格を取得。同時期に受講していた仲間たちとボランティアグループを結成し、都内で日本語教室の活動をスタートしました。
そんな中2011年3月11日、東日本大震災が発生。当時私たちのグループで日本語を学んでいた人たちからの問い合わせが相次ぎました。その多くは、「日本語でアナウンスされても、わからない。どの情報を信じればいいのか。」「日本は危ないから帰国しろと家族から言われる。帰るべきなのか。先生決めてもらえますか。」などといった内容でした。

それまで自分が「できること」は、語学を教えることだと思っていました。しかし、彼らにとって私は「語学を教えてくれる日本人」という存在だけではなかったのです。
この出来事をきっかけに、外国人のみなさんが安心して暮らせ、日本語指導だけではなく充実した生活を送れるようサポートする団体を設立しました。

選んだ道を心から喜んでくれた家族が今も大きな励み

家族は「どんなことをするの? できるの? 大変だよ。」が第一声だったと記憶しています。しかし、新しい目標に向け準備を進める姿を見て、「これまであなたがたくさんの人に支えてもらった分、今度はあなただからできる形で誰かの力になれたらいいね」と応援してくれました。

助成事業に取り組んでいた時、その喜びを父に報告したことがあります。「お父さんが一番嬉しい」というメッセージを受けましたが、「いやいや、私の方が嬉しいに決まっているわ」と思っていました。
しかし、その数か月後に父は癌で亡くなりました。私に心配をかけないようにと病気であることを黙っていたのです。応援団であった父はもう近くにいません。でも、あの時私が選んだ道を心から喜んでくれていたのだと、今も大きな励みとなっています。

誠心誠意の80%が目標。時には立ち止まる時間も持つことをこころがける

ライフシフト前は何事も100%、いや120%であるべき!と思っていました。
しかし今は、誠心誠意の80%が目標だと思えるようになりました。1日24時間という長さが変わらないのであれば、その中で私の最大限である80%をして、時には自分のためにわがままになり、立ち止まる時間を持つよう心がけています。

一歩の可能性を大切に。自分を信じ、今を大切にすることが、他の誰かを大切にすることへとつながる

「日本の文化やマナー、生活スタイルは十分理解しているし、日本語も話せるし、何も問題ない」「まわりにいる人たちが助けてくれるから大丈夫」という外国人ばかりであれば、この活動は必要ないかもしれません。
日本に来て不安が楽しいに変わり、自らの力で進む人たちが増えていけばと思います。そのためには、同じ志を持ったメンバーの力が必要で、それぞれのアイデアや技術を形にして、必要とする人たちへ届けていくことが目標です。そして、活動を通してメンバーにも笑顔でいてもらえることが願いです。

何かをスタートしようと考えたのであれば、それが次への可能性につながる一歩になると思います。15歳の時、今こうしてNPOを立ち上げ、仲間と共に活動している自分は想像していませんでした。
一歩の可能性を大切にすることで、たくさんの人や没頭できる活動に出会うきっかけとなりました。また、自分を信じ、今を大切にすることが、他の誰かを大切にすることへとつながるのではないでしょうか。