プロサッカー選手後、ザンビアへ。そこでの経験を活かし、政策、実践、研究と様々なアプローチからスポーツを通じたジェンダー平等社会を目指す/野口 亜弥(のぐち あや)さん《ライフシフターNo.018》

プロフィール

・元プロサッカー選手/現国家公務員(スポーツ・国際関係)

東京都在住。2014年スウェーデンでのプロサッカー選手引退後、アフリカのザンビアへ。6ヶ月のザンビア滞在中、スポーツが社会課題の解決を目指す一つの手法として活用されている現状を体験し、衝撃を受ける。
帰国後、専門的にこの分野を深めていきたいという想いから、現在は国家公務員としてスポーツ行政に携わっている。国際課にて主に各国や地域間のスポーツ交流や、スポーツを通じた国際開発の日本としての方向性の検討、各国との合意形成などを行う他、国際課の女性スポーツ担当者として、日本及び国際的なスポーツ界のジェンダー平等の実現と、スポーツを通じたジェンダー平等社会への貢献に対して日本としてどういった方針を持って実施していくか、ということを日々検討している。

影響を受けた本や作品:
・「夢とか希望の本当の意味はわからないけど、素敵な自分になれる魔法なんだと思う。」(絢香「夢を味方に」)
・「People can do no great things, only small things with great love」(マザーテレサ)

http://no11aya.exblog.jp/

ライフシフトする前の私は、サッカー選手でした。
3歳でサッカーを始め、大学を卒業するまでは日本でプレーをしていましたが、大学卒業時にアメリカの大学からリクルートしていただき、全額奨学金をもらってサッカー選手を続けながら大学院に進学しました。長期休みに入る夏休みにはニューヨークのマンハッタンにあるセミプロフェッショナルチームに入りプレーしていました。

アメリカには約4年滞在し、経営学修士(MBA)を取得のタイミングでスウェーデンの女子プロリーグに加盟する、リンショーピングFC (Linkoping FC)と短期のプロ契約。
26歳までサッカー選手を続けていましたが、2014年7月、リンショーピングFCとのプロ契約満了を持って、サッカー選手を引退し、アスリート引退後のキャリア形成にシフトすることにしました。

ライフシフト前の生活は、基本的にサッカー選手として競技優先の生活でしたが、選手時代も、アスリートとしてのキャリアと人生のキャリアと両軸で考える、“デュアルキャリア”を意識していましたので、練習や試合以外の空き時間を活用し、修士課程に進学し、英語のスキルアップにも励んでいました。

現在、アスリートのデュアルキャリアの大切さは話題となっていますが、割とそういうことを小さい頃から意識して活動できた選手時代であったと思っています。
当時、日本ではデュアルキャリアを意識した選手は、あまり多くはありませんが、スウェーデンのチームメイトは皆、デュアルキャリアを意識した選手生活をしていて、日本との違いに驚いたことを覚えています。

アスリートであると、必ずどこかで選手生活を引退することになるので、ライフシフトは必ず起こることだと思っています。
私の場合、大きく2つの理由でライフシフトを決断しました。1つは、サッカー選手として、なでしこジャパンとしてプレーするという目標の実現が難しいと実感したこと、そしてもう一つは、選手として抱いていた目標と同じくらい情熱を持てる新たな目標が持てたことです。

情熱を持てる新たな目標がライフシフトを後押し

プロサッカー選手を引退後、練習がなくなり、初めてまとまった時間が確保できたため、2015年1月から6か月間アフリカのザンビアに行きました。当時は、2012年のロンドンオリンピック・パラリンピックの後押しもあり、スポーツを通じた国際開発という分野がヨーロッパを中心に注目を集めていました。また、私は従前より、スポーツ界における女性の活躍に高い関心を持っていたこともあり、スポーツを通じてジェンダー平等社会に貢献する取組が、開発途上国で実行されていることをニュースや文献などを通じて知っていたので、現場でその取組を肌で感じて学びたいと思ったのです。

ザンビアでの6ヶ月の間、スラムの子供たちにサッカープログラムを提供したり、ヨーロッパのNGOとインドの銀行が開発した女の子のエンパワーメントを促すプログラムを現地の学校で実践したりと、スポーツが社会課題の解決を目指す一つの手法として活用されている現状を現場で体験し、衝撃を受けました。当時、(今でもまだまだ)日本では国際開発の手法としてスポーツが確立しておらず、そういった概念も一部の人にしか広がっていない状況でしたので、帰国後に専門的にこの分野を深めていける環境を探し、スポーツ庁国際課に勤めることになったのです。

今の職場で、スポーツを通じた国際開発にも、国際的なジェンダー平等社会への貢献にも政策面から携わることができ、当該分野の重要性を実感しています。また、仕事とは別で、友人と共に持続可能な開発目標(SDGs)へのスポーツの貢献を議論するワークショップを実施しています。

ライフシフト前も、ライフシフト後も同じ熱量の想いを持って、目標に向かって生活できているので、引退後の損失感もあまりなく、次の道にスムーズにライフシフトできたと思っています。

意識しているのは、「自分の心によく耳を傾け、素直に従い、勇気を持つこと」

プロサッカー選手時代と引退後の生活は明らかに違いますし、現役引退後のザンビアでの経験と、現在の官公庁の仕事では、かなり状況が違います。
しかし、精神的な部分や考え方のところで、「自分は何を望むものか、自分の得意なことを活かせるものは何か、自分は有限の時間をどう使いたいのか、自分はどんな働き方をしたいのか」と問い続ける癖がつきました。自分の心によく耳を傾け、素直に従い、勇気を持つことを意識して生活しています。

スポーツを通じたジェンダー平等社会への貢献を活動の軸に

今後は、スポーツを通じた国際開発、特にジェンダー平等社会へのスポーツの貢献を自分自身の軸に活動をしていきたいと思っています。
スポーツは壁を壊し、垣根を超える力を持っていると思います。スポーツのそういった力を正しく活用し、日本の女性と開発途上国の女性が同じ目線に立って一緒に成長できるプログラムを開発したり、この分野の発展の後押しとなれるような研究をしたり、各国の人々と手を組んで女性ムーブメントを展開したり、そういった取組に携われたらと思っています。

政策、研究、実践と役割は違いますが、様々なプレーヤーが必要になると思います。ぶれない軸をもって、柔軟にライフシフティングしながら、この分野に関わっていきたいです。
私の中では、ライフシフトは1回だけではなく、何度も訪れるのではないかと思っています。

「自分は何がしたいのか、何が得意なのか、何を大切にして、どんな風に時間を使いたいのか」を徹底的に自問自答して、その希望が一番叶う道を探して、声に出して求めて行くことを私自身は心がけています。

生意気と思われることもありますが、責任は全て自分自身でとらなければいけないですし、結果も求められる分、恐怖もありますが、ほんの少しの勇気で心が自由になれます。自分の気持ちに素直に向き合えば、情熱を持って取り組めることがはっきり見えてくるはずです。